遺産分割協議に期限ができるって本当!?特別受益・寄与分の改正について徹底解説
- 公開日:2021.06.25
- 最終更新日:2021.06.25
増加の一途をたどる所有者不明地や相続した土地の放置に歯止めをかけるべく、民法の改正が2021年4月21日国会で成立しました。
この改正法の成立により2024年から様々な改正点が施行されることとなりました。
民法の改正が成立した際は相続登記の義務化が大きく取り沙汰されたことも記憶に新しいのではないでしょうか?
今回は相続登記の義務化ではなく、同時に制定された遺産分割協議に関する「特別受益」と「寄与分」の改正についての解説を行ってまいります。
目次
本記事のポイント
① 遺産分割協議による遺産分割については今まで通り期限は設けられません
②「特別受益による贈与・寄与分が、相続発生から10年たつと主張できなくなる」
③「法定相続人以外に相続をおこなう特別の寄与も10年たつと主張不能に」
「遺産分割協議に期限が設けられるのではないか?」という疑問にも答えていきます。
遺産分割協議に期限が設けられるって本当!?
結論からお伝えすると、改正民法の施行後も法律上遺産分割協議による遺産分割の期限は設けられません。
そのため極端に言えば100年でも遺産分割協議を行い続けることもできる状態になっています。
しかし、そのように遺産分割が行われないままさらに相続を迎えると相続人の相続である数字相続が発生する危険性が高まります。
一度目の相続が行われていない状態で相続が行われるため、財産の権利の所在や移転が複雑化するという問題点があります。
さらに、この数字相続による複雑化に加え、特別受益による生前贈与の持ち戻しの問題や寄与分の請求が絡んでくるとさらに相続の権利関係・相続分の算定がより複雑化していきます。
こうした状況を鑑み、事態をより複雑化させてしまう「特別受益」と「寄与分」については、相続開始から10年という制限が設けられることになりました。
この特別受益と寄与分に対する10年の制限の設置を読み違えたために「遺産分割協議に制限が設けられるのでは!?」という誤った解釈が発生していたというわけですね。
遺産分割協議においては正しい知識をもとに進めていくことが大事になってきます。
特別受益と寄与分に関して10年の制限が設けられる
上記の事情を踏まえて、今回の民法改正にあたり「特別受益と寄与分に関しては相続発生後10年がたつと権利を主張できなくなる」という条項が設置されました。
このページを読んでいる方の中には「特別受益」と「寄与分」とは何なのか、またそれらが何故相続を複雑化させてしまうのかよくわかっていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここでは、「特別受益」と「寄与分」の概要とポイントを簡単に解説していきます。
「特別受益」ってなに?
特別受益というのは簡単に言えば生前贈与によって得た利益のことになります。
例えば、母と兄と妹の家庭で母が亡くなった場合、基本的には兄と妹は遺産を等分することになります。
しかし、もし兄が生前に母から多額の贈与を受けていた場合、妹からすると相続の際に遺産を等分するのは不公平感が残るものとなります。
そこで妹は「生前贈与による特別受益の持ち戻し」という形で、遺産分割の際に生前の贈与のことも含めて等分するように請求することができるというものです。
この「特別受益の持ち戻し」の算定の際に「どこまでが生前贈与でどこまでが生活扶助か」という問題が発生するため、遺産分割協議が複雑化するということです。
「寄与分」ってなに?
寄与分というのは、被相続人の生前に無償で介護や生活補助を行っていた際にその対価を認め相続する分ということになります。
例えば、父の生前に認知症であった父を2人の子供のうちの姉が献身的に介護していた場合、遺産相続協議の際にその介護の寄与分を主張し少し多めに遺産をもらうことができます。
しかし、これも「どの範囲までが寄与分として認められるのか」、「寄与分として認められる条件を満たしていたかどうか」など様々な点で複雑化する傾向にあります。
上記の例からもわかるように、「ただでさえ長期化しがちな遺産分割協議をさらに長期化させてしまう」ということで特別受益と寄与分に関しては相続開始から10年が経過すると主張できなくなるということです。
このような形で遺産分割協議で「特別受益」や「寄与分」を主張しようと考えている場合には、むやみやたらと分割協議の期間を引き伸ばしてはいけません。
なるべく早く遺産分割協議を進めていきましょう。
ただ、最後にもう一度お伝えしますが、これはあくまでも「特別受益」と「寄与分」に関する遺産分割協議については10年を過ぎると主張できなくなるというだけで、それ以外の「法定相続分」に関する一般的な遺産分割協議は引き続き行えるということを覚えておいてください。
法定相続人以外の親族が主張できる「特別の寄与」とは?
相続人以外の親族が、被相続人の介護や療養看護などを無償で行うことを「特別の寄与」と言います。
特別の寄与が認められる場合、相続の発生に伴い、寄与を認められた者が金銭の支払いを請求することができるというものです。
これにより法定相続人以外の親族による無償の介護や看護に関する貢献が法的に認められ、相続における遺産分割協議でも主張できる権利となっているため、不平等や不公平が是正されます。
はじめに述べた通り、こうした貢献を「特別の寄与」と呼び、このような貢献をした人を「特別寄与者」、請求し受け取る金銭のことを「特別寄与料」と呼びます。
例えば、以下のような被相続人の長男の妻が無償で介護していたケースが例として挙げられます。
被相続人の息子の妻が介護を行っていた場合
被相続人の長男がすでに死去しており、その妻が長年無償で被相続人を介護していたケースを考えてみます。
被相続人には他に2人の子供がいます。
そのため、基本的には被相続人の財産は「無償で介護を行っていた長男の妻」ではなく「何の介護も行っていなかったその他の子供たち」に相続されることになります。
長男が既に死去しているため、長男経由で長男の妻に間接的に相続の貢献分が届くということもありません。
このような事態に陥った場合、長男の妻は非常に大きな不公平感を感じることとなります。
こうした際には「特別な寄与」の請求によって不公平を解消できるようになっているということです。
しかし、今回の法改正に際し、この「特別の寄与」のも10年の制限が設けられることになりました。
こうした特別の寄与を主張したいと考えている人もなるべく早く遺産分割協議を進めることをおすすめしています。
相続の専門家からのアドバイス
今回は2024年施行の民法改正による遺産分割協議への影響を解説してまいりました。
前述のとおり、民法の改正によって「遺産分割協議そのもの」に期限が設けられるということは断じてありません。
ただその一方で「特別受益」と「寄与分」については遺産分割協議の中で10年を経過すると主張できなくなります。
上記二点の主張により相続分の請求を行いたいと考えている方は可能な限り早期の遺産分割協議を行いましょう。
遺産分割協議が法廷にもつれ込み遺産分割調停となった場合長いときには三年以上の時間がかかる場合もあります。
ただ、「可能な限り早期の遺産分割協議を」と言われても何をやったらいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そういった方は、まず相続の専門家にご相談することをおすすめします。
断片的なネット経由の知識や見聞きした情報ではなく、多くの経験を持つ専門家に相談することで安心して相続を進めることができます。
相続・遺言の無料相談を実施中です!
遺産分割協議について少し知識が付いてくると同時に、まだわからないことや実際にはどうしたらいいのかわからないという点もあるかと思います。
そこで当事務所ではそうした悩みをお持ちの方のために初回の相談を無料で行っております。
士業事務所への相談と聞くと身構えてしまう方も多いのですが、「まずは専門家に聞いてみて今後の相続・遺産分割協議の方針を立てようかな」というくらいの気持ちで来ていただいて構いません。
まずは相続分野に強みを持つ司法書士が皆様のお話を親切丁寧にお伺いして最適なご提案をさせていただきます。
無料相談のご予約は089-931-1240にお電話ください。
無料相談について詳しく知りたい方はこちらのページをご覧ください。
関連ページはこちら!相続の専門家がわかりやすく解説しています!
その他、遺産分割協議の注意点については下記をご参照ください。
注目の相続登記義務化についても、改正点については別の記事で詳しく解説していますので確認してみてください!
この記事の執筆者
- 司法書士法人南海リーガル・行政書士法人南海リーガル 代表 西森淳一
-
保有資格 司法書士・行政書士 専門分野 不動産登記・会社登記・相続遺言 経歴 平成25年8月に松山市にて開業以来、「地元愛媛県の皆様のために」の信念のもと、一つ一つの業務に全力で取り組み、数多くの案件に携わってまいりました。
皆様から大切な仕事のご依頼をいただき、終わったあとに「任せてよかった」といった言葉をいただくのは大変うれしいものです。そんな言葉をより多くいただけることを目標に日々の業務に取り組んでいます。どうぞお気軽にご相談ください。
- 愛媛県外の方も
ご相談可能! - 相続の専門家が
親身に対応! - 2,800件以上の
相談実績 - 無料相談はこちら
主な相続手続きのメニュー
家族信託をお考えの方へ
相続のご相談は当相談窓口にお任せください
よくご覧いただくコンテンツ一覧
松山で
相続・遺言に関する
ご相談は当事務所まで