遺言書の書き方を司法書士が解説
目次
遺言書の重要性とは
遺言書とは、遺言者が自身の死後に自分の財産をどのように処分するかを記した文書のことです。 遺言書を残すことで、自分の財産を自分の意思で大切な人に確実に残すことができます。 また、相続におけるトラブルを未然に防ぐことにも繋がります。
遺言書が必要な理由
遺言書を作成する主な理由は以下の点が挙げられます。
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- 遺産分割協議の省略: 遺言書があれば、相続人間で遺産分割協議を行う必要がなくなり、相続手続きをスムーズに進めることができます。遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要となるため、意見が対立すると手続きが長期化する可能性があります。遺言書があれば、このような事態を避けることができます。
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- 相続人の指定: 民法で定められた法定相続人以外の人に財産を残したい場合、遺言書によって相続人を指定することができます。例えば、内縁の妻やお世話になった友人などに財産を残したい場合、遺言書がなければ、その人たちは相続人として認められません。
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- 相続分の指定: 遺言書によって、法定相続分と異なる割合で財産を相続させることができます。例えば、特定の相続人に多くの財産を残したい場合や、逆に特定の相続人を相続から排除したい場合に有効です。
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- 遺言執行者の指定: 遺言の内容を実現するために、遺言執行者を指定することができます。遺言執行者は、遺言の内容に従って遺産の分割や名義変更などの手続きを行います。相続人が複数いる場合や、複雑な遺言内容の場合には、遺言執行者を指定することで、スムーズな相続手続きが期待できます。
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- 事業承継: 会社経営者などが、自分の死後、事業を誰に承継させるかを遺言書で指定することができます。後継者を明確にすることで、事業の安定的な継続を図ることができます。
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- 寄付: 遺言書によって、特定の団体や個人に財産を寄付することができます。社会貢献をしたいと考えている方は、遺言書で寄付先を指定することで、自分の意思を確実に実現できます。
このように、遺言書を作成することで、自分の死後の財産の処分について、自分の意思を反映させることができます。また、相続手続きをスムーズに進めることや、相続トラブルを未然に防ぐことにも繋がります。
遺言書の基本的な書き方
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。それぞれ書き方や必要な手続きが異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
自筆証書遺言の記載要件
自筆証書遺言は、遺言者本人が全文、日付、氏名を自署し、押印することで作成できます。費用がかからず、手軽に作成できるのがメリットです。 しかし、厳格な要件が定められており、要件を満たしていない場合は無効となってしまう可能性があります。
自筆証書遺言の記載要件は以下の通りです。
- 全文自書: 遺言書の全文を遺言者本人が自書する必要があります。ワープロやパソコンで作成したものは無効です。
- 日付の記載: 遺言書に作成年月日を記載する必要があります。
- 氏名の記載: 遺言書に遺言者本人の氏名を記載する必要があります。
- 押印: 遺言書に遺言者本人が押印する必要があります。実印である必要はありません。
また、財産目録を添付する場合には、各ページに署名と押印が必要です。財産目録とは、遺言で処分する財産の内容を具体的に記載した書類のことです。不動産や預貯金など、財産の名称、数量、所在地などを明確に記載します。
自筆証書遺言は、自宅で保管することができますが、紛失や改ざんの可能性があります。また、発見されない可能性もあるため、信頼できる人に保管を依頼するか、法務局に保管を申請することをおすすめします。
公正証書遺言の作成方法
公正証書遺言は、公証役場で公証人に遺言内容を伝え、公証人が作成する遺言書です。証人2人の立会いのもとで作成するため、最も確実な遺言書と言えます。
公正証書遺言の作成方法は以下の通りです。
- 公証役場へ予約: 遺言書を作成する公証役場へ電話で予約をします。
- 必要書類の準備: 遺言者の印鑑証明書、戸籍謄本、遺言の内容に関する資料(不動産登記簿謄本、預金通帳など)を用意します。
- 公証役場へ訪問: 予約した日時に、証人2人と共に公証役場へ訪問します。
- 遺言内容の伝達: 公証人に遺言内容を伝えます。
- 遺言書の作成: 公証人が遺言書を作成します。
- 遺言書の確認と署名押印: 作成された遺言書の内容を確認し、遺言者、証人2人、公証人が署名押印します。
- 遺言書の保管: 作成された遺言書は、公証役場で保管されます。
公正証書遺言は、公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。また、検認手続きが不要であるため、相続手続きをスムーズに進めることができます。ただし、作成に費用がかかること、証人2人を用意する必要があることがデメリットです。
遺言書に関する法律要件
遺言書を作成する際には、法律で定められた要件を満たす必要があります。要件を満たしていない遺言書は無効となってしまうため、注意が必要です。
相続人の定義と法律
相続人とは、被相続人(亡くなった人)の財産を相続する権利を持つ人のことです。相続人は、民法で定められています。
民法で定められた相続人は、以下の通りです。
- 配偶者: 常に相続人となります。
- 子: 第1順位の相続人となります。子が亡くなっている場合は、その子が相続人となります(代襲相続)。
- 直系尊属: 第2順位の相続人となります。父母、祖父母などが該当します。
- 兄弟姉妹: 第3順位の相続人となります。兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子が相続人となります(代襲相続)。
相続人は、法定相続分に従って遺産を相続します。法定相続分は、相続人の順位や人数によって異なります。
署名と日付の重要性
遺言書には、遺言者本人が署名し、日付を記載する必要があります。署名と日付は、遺言書の真正性を証明するために重要な要素です。
署名は、遺言者本人の意思で遺言書を作成したことを示すものです。氏名を自署するか、拇印を押印します。代筆された場合は、代筆者氏名と住所、代筆理由を記載する必要があります。
日付は、遺言書が作成された時点を特定するために必要です。年月日を明確に記載します。日付が記載されていない場合、遺言書が無効となる可能性があります。
署名と日付は、遺言書のvalidity (有効性)を判断する上で重要な要素となります。遺言書を作成する際には、必ず署名と日付を忘れずに記載しましょう。
無効となる遺言書のケース
遺言書は、法律で定められた要件を満たしていない場合、無効となります。無効な遺言書は、遺言者の意思が
反映されないだけでなく、相続人間でトラブルになる可能性もあります。
遺言書が無効となる主なケースは以下の通りです。
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- 方式の不備: 遺言書の種類ごとに定められた方式に従って作成されていない場合、無効となります。例えば、自筆証書遺言で全文が自書でなかったり、日付や署名がない場合は無効です。公正証書遺言で証人2人が立会い でなかったり、公証人の認証を受けていない場合も無効です。
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- 遺言能力の欠如: 遺言を作成する能力がない人が作成した遺言書は無効です。未成年者や判断能力を欠く人が作成した遺言書は、原則として無効となります。
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- 内容の違法性: 遺言の内容が法律や公序良俗に反する場合、無効となります。例えば、法定相続分を侵害する内容や、犯罪を助長する内容の遺言書は無効です。
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- 詐欺や強迫: 遺言者が詐欺や強迫によって遺言書を作成した場合、無効となります。遺言者の自由な意思で作成された遺言書でなければ、法的効力はありません。
遺言書が無効とならないためには、法律で定められた要件を満たしているか、専門家に確認してもらうことをおすすめします。
まとめ
この記事では、遺言書の書き方について、司法書士が詳しく解説しました。
遺言書は、自分の死後の財産の処分について、自分の意思を反映させるために重要なものです。相続手続きをスムーズに進めることや、相続トラブルを未然に防ぐことにも繋がります。
遺言書を作成する際には、法律で定められた要件を満たす必要があります。要件を満たしていない遺言書は無効となってしまうため、注意が必要です。
遺言書の作成に不安がある方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。遺言書の作成から相続手続きまで、丸ごとサポートいたします。
相続でお悩みの方は是非、一度当事務所の無料相談をご利用下さい!
この記事の執筆者
- 司法書士法人南海リーガル・行政書士法人南海リーガル 代表 西森淳一
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保有資格 司法書士・行政書士 専門分野 不動産登記・会社登記・相続遺言 経歴 平成25年8月に松山市にて開業以来、「地元愛媛県の皆様のために」の信念のもと、一つ一つの業務に全力で取り組み、数多くの案件に携わってまいりました。
皆様から大切な仕事のご依頼をいただき、終わったあとに「任せてよかった」といった言葉をいただくのは大変うれしいものです。そんな言葉をより多くいただけることを目標に日々の業務に取り組んでいます。どうぞお気軽にご相談ください。
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