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残された配偶者の生活を「家族信託」と「成年後見」で守る

公開日:2023.10.16
最終更新日:2024.09.09

社会全体として高齢化が進み、高齢の夫婦も増えてきています。そうなると心配になるのが、自分が亡くなった後誰が残される配偶者の財産管理や身の回りのサポートはやってくれるのかということがあると思います。

こうした不安を解決するために有効な制度として

・成年後見制度

・家族信託

があります。

この記事では、これらの制度を活用するメリットや、併用する場合の留意点などについて詳しく解説します。

成年後見制度

認知症などによって判断能力が低下した人が、いろいろな契約や手続きで不利益にならないよう、成年後見人が本人に変わって支援する制度です。

成年後見人は

・家庭裁判所から選任される法定後見人

・被後見人に判断能力があるうちに任意後見契約を締結する任意後見人

2種類があります。

成年後見制度の目的

判断能力が低下した本人に代わって財産管理や身上監護を行い、本人に不利益を被らないように守ることがこの制度の目的です。

(※身上監護とは、本人の生活・療養・介護等に関する法律行為を代わって行うことです。)

先ほど説明した後見人が持つ財産管理や処分などの権限は、本人の生活維持のためだけ、と限られています。

具体的な財産管理や身上監護の例

・本人のための住居確保や生活環境の整備

・介護施設等への入退所の契約

・医療機関への治療や入院の手続きなど

残された配偶者の生活を守るための後見制度

夫婦のどちらかが亡くなった後、残された配偶者が認知症になってしまうことも想定されます。

子どもがいる夫婦の場合

元気なうちに、配偶者と信頼できる子どもとの間で任意後見契約を結び、子どもを任意後見人にしておく方法があります。

子どもがいない夫婦の場合

任意後見人を誰にするか考えた時、配偶者の兄弟や甥姪などが考えられます。もし年齢的に変わらないかつ後見制度を理解し信頼できるのであれば一世代若い親族(甥姪など)のほうがいいでしょう。

実際には、後見制度の理解が容易ではなく信頼しにくいと感じやすいため、元気なうちに司法書士などの専門家へ依頼し、任意後見契約を結んでおく方法もあります。その前に認知症などになってしまった場合は、家庭裁判所に法定後見人を選任してもらうことになります。

家族信託

本人が元気で判断能力があるうちに、自分の財産を信頼できる家族に託して適切な財産管理をしてもらう制度です。

財産の保有者が委託者となり、信頼できる家族等が財産管理を行う受託者となることで、委託者の意思に沿った財産管理が可能です。

受託者は、委託者と結ぶ信託契約の範囲内で、受益者(多くの場合委託者が兼ねる)のためにのみ、財産の管理や処分を行います。

例えば、父親が委託者、その子が受託者、母親が受益者とすると、父親の財産を子が母のために管理や処分をするという形です。

家族信託は柔軟な財産管理ができる

家族信託は、財産管理や処分について、委託者、受託者、受益者間で同意された契約に委ねられているため、その内容について制限は設けられていません。

そのため、

・信託財産を使って投資用物件を購入して賃料を得る

・預金が減ることになっても節税効果を考えた財産の組み換えを行える

など、積極的な財産活用も可能です。

財産管理を行う点では成年後見制度も同じですが、成年後見制度は本人の生活維持が目的です。財産の支出については本人の財産を減らす行為となるので、金額によっては家庭裁判所の判断が必要なほど厳しいルールが定められています。

配偶者に特定の財産を残すことができる

ご自身が亡くなった後、配偶者に特定の財産を残したいと思っている方もいらっしゃると思います。さらに夫婦に子どもがいないと、配偶者以外にご自身の親族(親兄弟)も相続人となります。そのため、配偶者と実家の家族が相続財産をめぐってトラブルになることを心配される方もいらっしゃるでしょう。

こうしたトラブルを回避するためにも家族信託を用いることができます。

例えば自宅や別荘を配偶者に確実に相続させたい場合は、自宅や別荘を信託財産に入れて家族信託契約を結んでおくことで、他の相続人に渡ることなく、配偶者に残すことができます。

自宅の場合は「配偶者居住権」があるため、基本的に家族信託を結んでいなくても住み続けることはできます。ただし遺産分割協議の対象になると、協議が調わなかったときに家庭裁判所の審判に申し立てをすることになります。

確実に配偶者に財産を残したいのであれば、家族信託の利用が有効です。

家族信託と成年後見制度の併用がおすすめ

以上のように、家族信託と成年後見制度でできることは異なります。

柔軟な財産管理ができる家族信託と、遺される配偶者の生活や権利を守る成年後見制度を併用することも有効です。

一般的に、家族信託における受託者と、遺される配偶者の任意後見人となる人は同一であることが多く、夫婦に子どもがいる場合なら長男や長女が選ばれることが多いでしょう。

家族信託と成年後見制度を併用することの留意点

前述のとおり、家族信託や任意後見制度を利用する場合、受託者や任意後見人は一番信頼できる人に任せたいと、本人の子どもを選ぶことが多いです。

そのため、家族信託と任意後見制度を併用する場合では、家族信託の受託者と任意後見人を同一人物が兼ねるケースが出てきます。しかし受託者と任意後見人を同一人物にすることは望ましくないと考えられます。

家族信託では信託財産の管理者とその管理を監督する人がいます。受託者が管理をし、その業務を監督するのは受益者です。

多くの場合、受益者は委託者を兼ねているため、財産を託す委託者が「受託者がちゃんと管理をしているか」を監督することになります。

一方、任意後見人は、家族信託における受託者を監督する立場になります。

つまり受託者と任意後見人が同一人物だと、受託者として監督される立場と、受託者を監督する立場が同一人物になり(自分で自分を監督することになり)、監督をすることに意味がなくなってしまうのです。

そのような事態を避けるために、家族信託の受託者と、任意後見契約を結ぶ任意後見人を別の人物にする必要があります。

信頼できる子どもが2人以上いる場合は、それぞれ受託者と任意後見人になってもらいます。

信頼できる親族が一人しか見つからない場合は、司法書士などの信頼できる専門家と任意後見人契約を結ぶ方法もあります。

家族信託や成年後見制度についてのご相談は司法書士へ

成年後見制度はもともとある制度ですが、家族信託は比較的新しい制度です。

2つの制度は併用することができますが、それぞれのメリットを生かすためには、信託財産の設定や、受託者、任意後見人を誰にするかなど綿密な計画を立てる必要があります。

また利用の仕方を誤ると、せっかくのメリットを生かすことができない可能性もあります。

家族信託は、本人が元気なうちでないと利用できない制度です。利用する場合は、専門家である司法書士に依頼することをおすすめします。

当事務所では、家族信託や成年後見制度の活用についての実績があり、個々のケースに適した提案ができます。

「子どもがいないので配偶者が一人残ったときが心配」「家族信託と成年後見制度について知りたい」などなんでもお気軽にご相談ください。

この記事の執筆者
司法書士法人南海リーガル・行政書士法人南海リーガル 代表 西森淳一
保有資格 司法書士・行政書士
専門分野 不動産登記・会社登記・相続遺言
経歴 平成25年8月に松山市にて開業以来、「地元愛媛県の皆様のために」の信念のもと、一つ一つの業務に全力で取り組み、数多くの案件に携わってまいりました。
皆様から大切な仕事のご依頼をいただき、終わったあとに「任せてよかった」といった言葉をいただくのは大変うれしいものです。そんな言葉をより多くいただけることを目標に日々の業務に取り組んでいます。どうぞお気軽にご相談ください。

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